君は「アニメンタリー決断」を知っているか

陸海軍爾後ノ作戦指導大綱

陸海軍爾後ノ作戦指導大綱

  昭和十九年七月二十四日
   大本営海軍部
   大本営陸軍部

帝国陸海軍ハ敵戦力ヲ撃破シツツ国防要域ヲ確保シ以テ敵継戦企図ヲ破催スル為左記ニ基キ爾後ノ作戦ヲ指導ス

第一 方針
一、
本年後期米軍主力ノ進攻ニ対シ決戦ヲ指導シ其ノ企図ヲ破催ス
決戦方面ヲ本土(北海道、本州、四国、九州付近及状況ニヨリ小笠原諸島ヲ指ス)連絡圏域(南西諸島、台湾及東南支那付近ヲ指ス)及比島方面(地上決戦方面ハ概ネ北部比島付近トス)ト予定シ決戦ノ時期ヲ概ネ八月以降ト予期ス
決戦実施ノ要域ハ大本営之ヲ決定ス

第二 要領
二、
対米決戦指導
(イ)
西太平洋方面ニ於テハ敵ノ来攻ニ先タチ機会ヲ捕捉シ極力敵戦力ヲ漸滅シ其ノ進攻ヲ防止スルニ努メ又手段ヲ尽シテ敵情偵知ニ努ム
(ロ)
速ニ小笠原諸島、大東島及千島要域ノ戦備ヲ増強スルト共ニ概ネ八月末頃ヲ目途トシテ連絡圏域及比島方面要域ニ於ケル、又概ネ十月頃ヲ目途トシテ直接本土ニ於ケル決戦戦備ヲ構成シ爾後更ニ之ヲ増強ス此間本土枢要部ノ防空戦備ヲ更ニ促進強化ス
(ハ)
敵ノ決戦方面来攻ニ方リテハ空海陸ノ戦力ヲ極度ニ集中シ敵空母及輸送船ヲ所在ニ求メテ之ヲ必殺スルト共ニ敵上陸セバ之ヲ地上ニ必滅ス
此際機ヲ失セス空海協力ノ下ニ予め待機セル反撃部隊ヲ以テ極力敵ヲ反撃ス
敵ノ来攻二方面以上ニ亙ル場合決戦実施要域ハ敵主力機動部隊ノ指向方面其ノ他全般ノ戦況ニ鑑ミ之ヲ決定ス
(ニ)
国力戦力ノ維持培養ノ為特ニ連絡圏域方面ニ於ケル対潜対空兵力ノ重点的配備ヲ構成シ以テ敵機動部隊ノ策動及基地ヨリスル敵空襲ノ激化ニ備ヘ又敵潜水艦ノ跳梁ヲ封殺シ本土及南方資源要域間海上交通ノ確保ヲ期ス

三、
中部太平洋方面作戦
(イ)
機宜航空基地ヲ活用シテ奇襲攻撃ヲ行ヒ敵基地ノ利用封殺並敵兵力ノ漸滅ヲ策ス
(ロ)
小笠原及「パラオ」両方面ヨリ主トシテ航空機ヲ以テ「マリアナ」方面ノ敵ニ対スル攻勢ヲ極力持続スルニ努ム
(ハ)
敵来攻セバ概ネ所在兵力ヲ以テ之ヲ撃破シ敵ノ進攻ヲ阻止スルニ努ム

四、
南西方面作戦
(イ)
南西方面作戦ノ重点ハ比島方面ニ於ケル決戦指導並ニ油田地帯、艦隊主要泊地(「ギマラス」「タウイタウイ」「ブルネイ」「リンガ」)ノ確保防衛トス
(ロ)
濠北方面(「ソロン」「ハルマヘラ」「アンボン」付近ノ地点ヲ重点トス)ハ南方圏東翼ノ支援トシテ来攻スル敵ヲ撃破シテ極力之ヲ確保ス
(ハ)
緬甸方面ハ南方圏北翼ノ支援トシ印支分断ノ戦略根拠及西南支那方面ノ把握ト相俟ツテ印度支那方面安定確保ノ前哨タル如ク来攻スル敵ヲ撃破シツツ其ノ要域ヲ確保ス
(ニ)
状況之ヲ許セバ一部潜水艦ヲ以テ機宜印度沿海及濠洲西岸ニ於ケル敵偵知及敵補給路ノ遮断ニ努ム
又独国潜水艦ノ印度洋ニ於ケル交通破壊ニ対シ積極的ニ協力シ之ヲ促進ス

五、
北東方面作戦
千島樺太方面ニ於テハ概ネ所在兵力ヲ以テ来攻スル敵ヲ撃破シテ其ノ要域ヲ確保ス
北海道方面敵来攻ニ方リテハ機宜決戦ヲ指導ス

六、
南東方面作戦
所在兵力ヲ以テ来攻ノ敵ヲ撃破シテ極力其ノ要域ヲ確保ス 尚一部飛行場ノ機ニ投ズル利用ヲ可能ナラシムルニ努ム

七、
対支作戦
(イ)
概ネ本年末頃迄ニ一号作戦ノ全目的ヲ達成シ右ニ引続キ全般ノ状況之ヲ許ス限リ西南支那方面ニ於ケル戦略態勢ヲ強化シ主トシテ印支分断及印度支那方面ノ安定確保ヲ容易ナラシム
(ロ)
浙東沿岸要地ヲ占領シテ米支連絡ヲ未然ニ封殺スルト共ニ連絡圏域周辺ノ確保及船艇連絡ヲ容易ナラシム
(ハ)
中支三角地帯(南京、上海及杭州付近ノ地帯)方面ニ於ケル東面ノ空地整備ヲ極力強化シ九州沖縄台湾ト相俟テ東支那海ニ於ケル強力ナル支援ヲ構成ス

八、
対蘇施策
蘇連ニ対シテハ有ユル戦政略施策ヲ講ジテ日蘇戦ノ惹起ヲ防遏スルニ努ム

九、
各方面毎ニ後方断絶ニ備極力各地域ノ自活自戦能力ヲ向上シ長期克ク独力ヲ以テ作戦ヲ遂行ス
右ニ関連シ特ニ船艇輸送及之ガ掩護並ニ主要幹線鉄道ノ強化確保ヲ重視ス

(終)
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