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対米英蘭戦争帝国海軍作戦計画

対米英蘭戦争帝国海軍作戦計画

第一編 総則

一、
本作戦計画ハ現情勢ニ鑑ミ対支作戦中米国、英国及蘭国ト開戦スル場合ノ作戦ニ関シ昭和十六年度帝国海軍作戦計画ヲ修正シテ策定セリ
二、
兵力ノ編制、作戦指導、防備、海上交通ノ保護、運輸補給、通信並ニ情報蒐集等ニ関シテハ昭和十六年度帝国海軍作戦計画ヲ準用ス
三、
本計画特ニ第三編所掲事項ハ情況変化ニ応ジ所要ノ修正ヲ行フモノトス

第二編 対支作戦中米国、英国及蘭国ト開戦スル場合ノ作戦

第一章 作戦目的
四、
帝国海軍ノ作戦目的ハ支那沿海及揚子江水域ノ制圧ヲ続行シツツ在東洋敵艦隊及航空兵力ヲ撃破スルト共ニ東亜ニ於ケル米国、英国及蘭国ノ主要ナル根拠地ヲ攻略シテ南方要域ヲ占領確保シ且敵艦隊ヲ撃滅シテ終極ニ於テ敵ノ戦意ヲ破摧スルニ在リ

第二章 作戦方針
五、
米国、英国及蘭国ニ対スル作戦方針左ノ如シ
(一)
第一段作戦
(イ)
作戦初頭速ニ在東洋敵艦隊及航空兵力ヲ撃滅シテ東洋海面ヲ制圧スルト共ニ陸軍ト協同シテ菲律賓、瓦無島、英領馬来、英領「ボルネオ」、蘭領印度、「ビスマーク」諸島並ニ緬甸等ノ要地ヲ攻略又ハ占領ス
(ロ)
此ノ間敵艦隊主力ノ動静ヲ偵知シ好機ニ投シ之ガ減殺ニ努ム
(二)
第二段作戦
(イ)
敵艦隊ノ主力来航セバ其ノ途上ニ捕捉減勢シツツ之ヲ東洋海面ニ邀撃撃破ス此ノ場合努メテ米、英両国ノ艦隊ヲ個々ニ撃滅ス
(ロ)
米国艦隊ノ主力其ノ本土又ハ布哇方面ニ在リテ持久ヲ策スル場合ハ西太平洋ノ制海、制空権ヲ確保シテ我戦略態勢ヲ強化シ海上交通線ヲ保護スルト共ニ敵根拠地ニ対スル奇襲及敵交通線ノ破壊等ニ依リ敵艦隊ノ活動ヲ封止スルカ又ハ其ノ来航ヲ強要ス
六、
支那ニ対スル作戦方針左ノ如シ
支那沿海並ニ下揚子江及珠江水域ノ制圧ヲ続行スルト共ニ支那沿岸所要ノ要地ヲ確保ス
七、
露国ニ対シテハ所要ノ警戒ヲ行ヒ戦争ノ発生ヲ防止スルニ努ム

第三章 作戦要領

第一節 第一段作戦
八、
第一段作戦初頭ニ於ケル兵力配備左ノ如シ
(一) 菲律賓方面
     第二、第三艦隊ヲ基幹トスル部隊
(二) 南部仏領印度支那方面
     南遣艦隊ヲ基幹トスル部隊
(三) 台湾及南部仏領印度支那方面
     第十一航空艦隊ヲ基幹トスル部隊
(四) 香港及南支沿岸方面
     第二遣支艦隊ヲ基幹トスル部隊
(五) 布哇方面
     第六艦隊ヲ基幹トスル部隊
(六) 北太平洋方面
     第一航空艦隊ヲ基幹トスル部隊
(七) 南洋群島方面
     第四艦隊ヲ基幹トスル部隊
(八) 菲律賓及新嘉坡方面
     連合艦隊ノ一部
(九) 本邦東方海面
     第五艦隊ヲ基幹トスル部隊
(十) 本邦近海
     連合艦隊主力
(十一)揚子江及支那沿海
     支那方面艦隊(第二遣支艦隊ヲ除ク)
情況ニ依リ右兵力配備ヲ変更スルコトアリ
九、
第一段作戦ニ於ケル全般ノ作戦要領左ノ如シ
(一)
英領馬来並ニ菲律賓ニ対シテ同時ニ作戦ヲ開始シ所在航空機並ニ艦艇ニ対シテ先制空襲ヲ加フルト共ニ成ルベク速ニ陸軍先遣兵団ヲ馬来及菲律賓ノ要地ニ上陸セシメテ航空基地ヲ獲得シ航空部隊ヲ推進シテ航空戦ノ成果ヲ拡大ス
(二)
航空作戦ノ成果ヲ利用シ陸軍攻略軍ノ主力ヲ菲律賓ニ次テ馬来ニ上陸セシメ速ニ菲律賓及英領ヲ攻略ス
(三)
作戦初期瓦無島、「ウエイキ」島、香港並ニ英領「ボルネオ」ノ要地ヲ占領シ次デ成ルベク速ニ蘭領「ボルネオ」、「セレベス」、「ビスマーク」諸島、南部「スマトラ」ノ要地ヲ又機ヲ見テ「モルッカ」諸島及「チモール」島ノ要地ヲ占領ス
(四)
前項要地ニ於ケル航空基地ノ整備ニ伴ヒ航空部隊ヲ推進シ敵航空兵力ヲ制圧シテ爪哇島ヲ攻略ス
(五)
第(三)第(四)項ノ作戦間機ヲ見テ南部緬甸ノ航空基地ヲ占領シ新嘉坡攻略後適時北部「スマトラ」ノ要地ヲ占領ス
(六)
開戦劈頭機動部隊ヲ以テ布哇所在敵艦隊ヲ奇襲シ其ノ勢力ヲ減殺スルニ努ム
(七)
前諸号ノ作戦ハ米国主力艦隊ノ動静ニ応ジ連合艦隊ガ邀撃配備ニ転換スル場合又ハ北方情勢ノ緊迫等情勢ノ変化アルモ之ガ継続遂行ニ支障ナカラシム
(八)
支那ニ対シテハ陸軍ト協同シテ現在ノ圧迫態勢ヲ継続シテ蒋政権ノ屈伏ヲ期スルト共ニ支那ニ於ケル英、米勢力ヲ掃滅ス
十、
菲律賓、馬来、英領「ボルネオ」及蘭領印度方面ニ於ケル第二艦隊、第三艦隊、第十一航空艦隊及南遣艦隊ヲ基幹トスル部隊ノ作戦要領左ノ如シ
(一)
菲律賓方面
(イ)
開戦劈頭菲律賓方面ノ敵航空兵力及艦隊ニ対シ先制空襲ス
(ロ)
陸軍ト協同シテ先遣兵団ヲ成ルベク速ニ呂宋島北部「レガスピー」及「ダバオ」附近ニ上陸セシメ次デ「ホロ」島ヲ占領シ航空基地整備次第之ヲ使用シテ航空作戦ヲ強化ス
(ハ)
敵航空兵力ノ大部ヲ撃破シタル後菲律賓攻略軍主力ヲ「リンガエン」附近ニ其ノ一部ヲ「ラモン」湾附近ニ上陸セシム
(ニ)
第三艦隊ヲ基幹トスル部隊ヲ以テ前諸項ノ陸軍部隊ヲ護衛シ且其ノ上陸ヲ掩護ス
(ホ)
第二艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ敵水上艦隊ヲ索メテ之ヲ撃滅シ成ルベク速ニ菲律賓周辺海面ヲ制圧ス
(二)
馬来方面
(イ)
開戦劈頭陸軍ト協同シテ先遣兵団ヲ「シンゴラ」、「バタニー」、「ナコン」、「バンドン」及(「コタバル」)附近ニ上陸セシメ速ニ航空基地ヲ占領整備スルト共ニ南部仏領印度支那方面ヨリ英領馬来方面ノ敵航空兵力及艦隊ヲ先制空襲ス
(ロ)
前項航空基地ノ整備次第之ヲ利用シ航空作戦ヲ強化シテ其ノ成果ヲ拡充ス
(ハ)
菲律賓攻略軍主力上陸後護衛艦艇ノ一部ノ回航ヲ待チ馬来攻略軍主力ヲ南部泰ニ上陸セシム
(ニ)
作戦進展ニ伴ヒ情況之ヲ許ス限リ陸軍一兵団ヲ馬来東岸南方ニ上陸セシム
(ホ)
南遣艦隊ヲ基幹トスル部隊ヲ以テ前諸項ノ陸軍部隊ヲ護衛シ且其ノ上陸ヲ掩護ス
(ヘ)
第二艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ敵水上艦艇ヲ索メテ之ヲ撃滅シ南支那海ヲ制圧ス
(三)
英領ボルネオ方面
南遣艦隊ヲ基幹トスル部隊ノ一部ヲ以テ陸軍支隊ヲ護衛シ陸軍ト協同シテ「ミリ」ヲ次デ「クチン」ヲ占領シ航空基地ヲ整備セバ航空部隊ヲ推進シテ新嘉坡及蘭印方面ニ対スル航空作戦ヲ実施ス
(四)
蘭領印度方面
(イ)
航空部隊ノ「ホロ」推進後成ルベク速ニ陸軍ト協同シテ「タラカン」ヲ攻略シ又之ト同時期ニ海軍部隊ヲ以テ「メナド」ヲ攻略ス
次デ陸軍主力ノ馬来上陸後成ルベク速ニ陸軍ト協同シテ逐次「バリックパパン」、「バンジェルマシン」又機ヲ見テ「アンボン」及「クーバン」ヲ攻略シ之ト前後シテ海軍部隊ヲ以テ「ケンダリー」及「マカッサル」ヲ攻略シテ所要ノ航空基地ヲ整備ス
(ロ)
英領馬来方面ニ於ケル作戦ノ進展ニ応ジ南遣艦隊ヲ基幹トスル部隊ヲ以テ機ヲ見テ陸軍ト協同シテ「バンカ」島ノ要地及「パレンバン」ヲ占領ス
(ハ)
前各号ノ航空基地整備セバ逐次航空部隊ヲ推進シ敵航空兵力ヲ制圧シタル後爪哇攻略軍主力ヲ「バタビヤ」附近ニ他ノ一兵団ヲ「スラバヤ」附近ニ上陸セシム
右陸軍部隊ハ第三艦隊ヲ基幹トスル部隊ヲ以テ護衛シ且其ノ上陸ヲ掩護ス
(ニ)
新嘉坡攻略後陸軍ト協同シテ北部「スマトラ」ノ要地ヲ占領シ又主トシテ敵ノ対支補給路遮断ノ目的ヲ以テ機ヲ見テ緬甸ニ対シ作戦ス
十一、
南洋群島方面ニ於ケル第四艦隊ヲ基幹トスル部隊ノ作戦要領左ノ如シ
(一)
開戦初頭速ニ陸軍ト協同シテ瓦無島ヲ次デ機ヲ見テ「ラバウル」ヲ占領ス
又開戦初頭海軍部隊ヲ以テ「ウエイキ」島ヲ奇襲占領ス
(二)
作戦全期ヲ通ジ南洋群島方面要地ノ防備、哨戒並ニ敵情偵察ニ任ズルト共ニ好機ニ投ジテ南太平洋方面ニ在ル敵前進基地ノ破壊ヲ行ヒ又敵ノ東洋ニ至ル交通路ヲ扼止ス
十二、
本邦東方海面ニ於ケル第五艦隊ヲ基幹トスル部隊ノ作戦要領左ノ如シ
(一)
本邦東方海面ニ於ケル哨戒、敵情偵察ニ任ズルト共ニ横須賀鎮守府部隊及大湊要港部部隊ト協力シテ敵ノ機動部隊ニ対シ警戒シ之ガ捕捉撃滅ニ努ム
(二)
小笠原群島方面ノ防備並ニ同方面ニ於ケル海上交通保護ニ任ジ兼テ対蘇警戒ニ備フ
十三、
第六艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ開戦初頭ヨリ布哇及米国太平洋沿岸方面ニ進出シ敵艦隊ノ偵察、監視、奇襲及海上交通線ノ破壊ニ任ズ
十四、
第一航空艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ開戦劈頭布哇所在ノ敵艦隊ヲ奇襲シ其ノ勢力ヲ減殺スルニ努ム 爾後主トシテ第四艦隊ノ作戦及南方攻略作戦ノ支援ニ任ズ
十五、
連合艦隊主力ハ作戦全般ノ支援ニ任ジ敵艦隊ノ動静ニ応ジ機宜行動ス
十六、
支那方面ニ於ケル支那方面艦隊ノ作戦要領左ノ如シ
(一)
開戦初頭速ニ揚子江方面及支那沿海ノ敵艦隊ヲ撃滅ス
(二)
陸軍ト協同シテ下揚子江並ニ珠江水域ヲ制圧シ其ノ交通ヲ安全ナラシムルト共ニ米国陸上兵力ヲ掃蕩ス
(三)
北支沿海ノ制圧並ニ南支沿海ノ封鎖ヲ続行シテ支那沿岸ノ海上交通線ヲ保護スルト共に概ネ現占領地域ヲ確保シ且敵艦船航空機ノ支那沿岸利用ヲ阻止ス
(四)
陸軍ノ海上輸送護衛及集合点ノ防備等ニ関シ所要ニ応ジ連合艦隊及陸軍ノ作戦ニ協力ス
(五)
第二遣支艦隊ヲ基幹トスル部隊ヲ以テ開戦初頭陸軍ト協同シテ香港ヲ攻略ス
十七、
各鎮守府及要港部部隊ハ各担任区域方面ノ作戦ニ関シ連合艦隊及支那方面艦隊ニ協力ス
十八、
連合艦隊ノ一部兵力ハ太平洋及印度洋方面ニ於テ敵交通ノ破壊戦ニ任ズ

第二節 第二段作戦
十九、
第二段作戦初頭ニ於ケル兵力配備左ノ如シ
(一)
米国主力艦隊所在方面
  第六艦隊ヲ基幹トスル部隊
(二)
南洋群島方面
  第四艦隊及第十一航空艦隊ヲ基幹トスル部隊
(三)
本邦東方方面
  第五艦隊ヲ基幹トスル部隊
(四)
菲律賓及蘭領印度方面
  第三艦隊ヲ基幹トスル部隊
(五)
英領馬来及南部仏領印度支那方面
  南遣艦隊ヲ基幹トスル部隊
(六)
本邦近海
  連合艦隊主力
(七)
支那方面
  支那方面艦隊
二十、
第二段作戦ニ於ケル作戦要領左ノ如シ
(一)
敵ガ持久戦ヲ企図スル場合
(イ)
第六艦隊ハ敵艦隊ノ偵察、監視、奇襲ニ任ズ又連合艦隊ノ一部ノ兵力ト共ニ敵海上交通線ノ破壊ヲ強化シ情況ニ依リ敵前進基地ノ奇襲破壊ヲ行フ
(ロ)
第一航空艦隊及第十一航空艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ敵兵力ノ捜索攻撃並ニ敵前進基地ノ攻撃破壊ニ任ズ
(ハ)
第三艦隊及南遣艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ南方占領地域ノ防備哨戒ニ任ジ且帝国ト南方占領地域トノ間ノ海上交通線ヲ確保ス之ガ為西太平洋就中南支那海、爪哇海、「セレベス」海並ニ菲律賓沿海ノ制海権ヲ確保シ同方面ニ出没スル敵艦艇ヲ撃滅スルト共ニ敵前進根拠地ノ奇襲破壊ニ努ム
(ニ)
第四艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ南洋群島並ニ「ビスマーク」諸島方面占領要地ノ防備、哨戒、敵情偵察、敵勢ノ減殺及海上交通線の保護ニ任ズルト共ニ敵ノ東洋ニ至ル海上交通路ヲ扼止シ敵前進基地ノ奇襲破壊ニ努ム
(ホ)
第五艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ本邦東方海面ヲ哨戒シテ敵ノ奇襲ニ備へ機ヲ見テ「アリューシャン」群島方面ニ対シ奇襲攻撃ヲ加フルト共ニ小笠原群島方面ヲ防備シ同方面ニ於ケル海上交通線ノ保護ニ任ジ兼テ対蘇警戒ニ備フ
(ヘ)
連合艦隊ノ一部ハ太平洋及印度洋方面ニ於テ敵海上交通線ノ破壊ニ努ム
(ト)
連合艦隊主力ハ本邦沿海ニ在リテ前各項部隊ノ作戦ヲ支援ス
(チ)
支那方面艦隊ハ第一段作戦ノ要領ニ準ジ作戦ス
(リ)
各鎮守府及要港部部隊ハ各担任区域ノ要地防備並ニ担任区域内海上交通路ノ保護ニ任ズ
(二)
米主力艦隊来航スル場合
(イ)
第六艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ敵主力艦隊ニ対シ直接間接ニ触接ヲ維持シ其ノ行動ヲ偵知シ好機ニ投ジ敵勢ノ減殺ニ努ムルト共ニ艦隊決戦ニ参加ス
(ロ)
第十一航空艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ南洋群島方面ニ展開シテ敵情偵察、触接並ニ敵勢ノ減殺ニ任ズルト共ニ艦隊決戦ニ参加ス
(ハ)
第三艦隊及南遣艦隊ハ南支那海並ニ菲律賓、蘭領印度周辺海面ノ制海権確保ニ任ジ連合艦隊主力ノ作戦ニ策応ス
(ニ)
第四艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ南洋群島要地ノ防備、敵情偵察、哨戒、触接並ニ敵勢ノ減殺ニ任ジツツ連合艦隊主力ノ決戦ニ参加ス
(ホ)
第五艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ南方諸島以北本邦東方海面ニ在リテ要地ノ防備、敵情偵察、哨戒、触接並ニ敵勢ノ減殺ニ任ジツツ連合艦隊主力ノ決戦ニ参加ス
(ヘ)
連合艦隊主力ハ前記各部隊ト策応シテ敵主力艦隊ヲ邀撃撃滅ス
(ト)
支那方面艦隊ハ第一段作戦ノ要領ニ準ジ作戦ス
(チ)
各鎮守府及要港部部隊ハ各担任区域方面ノ作戦ニ関シ連合艦隊及支那方面艦隊ニ協力ス
各鎮守府及要港部部隊ハ所要ノ兵力ヲ情況ニ応ジ所要地点ニ移動進出セシメ同方面ノ作戦ニ関シ艦隊指揮官若クハ当該方面担任ノ鎮守府又ハ要港部部隊指揮官ノ指揮ヲ受ケシム
(三)
英国ノ有力部隊来航スル場合
(イ)
第十一航空艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ英国艦隊ノ動静ニ応ジ機宜移動集中シ敵情偵察、触接並ニ敵勢ノ減殺ニ任ズルト共ニ艦隊決戦ニ参加ス
(ロ)
第三艦隊及南遣艦隊ハ馬来、蘭領印度、菲律賓等ノ要地防備、敵情偵察、哨戒、触接並ニ敵勢ノ減殺ニ任ジツツ連合艦隊主力ノ作戦ニ策応ス
(ハ)
第四艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ南洋群島ノ防備ヲ厳ニシツツ敵情偵察、哨戒、敵影ノ減殺ニ任ジ以テ連合艦隊主力ノ作戦ニ策応ス
(ニ)
連合艦隊ノ一部ハ敵艦隊ニ対スル触接ニ努メ好機ニ投ジ敵勢力ノ減殺ニ努ムルト共ニ艦隊戦闘ニ参加ス
(ホ)
連合艦隊主力ハ米主力艦隊ノ動静之ヲ許ス限リ英艦隊ヲ索メテ之ヲ撃滅ス
(ヘ)
支那方面艦隊、第五艦隊及第六艦隊ノ作戦要領ハ第一段作戦ノ要領ニ準ズ

第四章 防備
二十一、
兵力ヲ配備シ防備スベキ地点概ネ左ノ如シ
各軍港要港
東京海湾 伊勢海 父島及母島 硫黄島 南鳥島 津軽海峡及陸奥海峡 宗谷海峡 室蘭港 厚岸港 択捉島 松輪島 幌筵島 豊後水道 紀伊水道 下関海峡 長崎港 対馬海峡及釜山港 羅津浦 奄美大島海峡 旅順港及大連湾 高雄港 「サイパン」島 「テニアン」島 「パラオ」諸島 「トラック」諸島 「ボナペ」諸島 「マーシャル」諸島ノ要地 三亜港 「カムラン」湾 西貢港
二十二、
占領地域中防備スベキ主要地点ヲ左ノ通予定ス
馬尼刺 「ダバオ」 新嘉坡 「ペナン」 「バタビヤ」 「スラバヤ」 「タラカン」 「メナド」 「アンボン」 「マカッサル」 「ラバウル」 香港

第五章 海上交通ノ保護
二十三、
日本海、黄海、東海、本邦太平洋沿岸及南支那海、爪哇海、「セレベス」海等ノ海上交通ハ之ヲ確保ス
二十四、
南洋群島方面菲律賓東方海面並ニ「オホーツク」海ノ海上交通ハ極力之ヲ確保スルニ努ム

第六章 運輸補給
二十五、
策源地及其ノ使用区分ヲ概ネ左ノ如ク予定ス
第一、第二艦隊、第一航空艦隊並ニ連合艦隊直属部隊  呉軍港
第三艦隊、南遣艦隊、第十一航空艦隊及支那方面艦隊  佐世保軍港
第四、第五、第六艦隊  横須賀軍港
二十六、
前進根拠地ヲ左ノ如ク定ム
奄美大島海峡 馬公要港(高雄港併用) 「パラオ」諸島 「トラック」諸島 「クエジェリン」島 「サイパン」島(瓦無島併用) 三亜港 西貢 「カムラン」湾
二十七、
占領地域ニ於ケル前進根拠地ヲ左ノ通予定ス
馬尼刺 新嘉坡 「スラバヤ」

第三編 対米、英、蘭、支作戦中露国ト開戦スル場合ノ作戦

第一章 作戦目的
二十八、
帝国海軍初期ノ作戦目的ハ第一編第一章ノ作戦目的ヲ速ニ達成スルト共ニ在東洋敵艦隊及航空兵力ヲ撃滅シ極東露領沿海ヲ制圧シ且所要ノ露国要域ヲ攻略確保スルニ在リ

第二章 作戦方針
二十九、
米国、英国及蘭国ニ対スル作戦ハ概ネ第二編第二章ノ作戦方針ニ則リ之ヲ続行ス
三十、
露国ニ対スル作戦方針左ノ如シ
(一)
米国、英国及蘭国ニ対スル第一段作戦完了後露国トノ間ニ開戦トナリタル場合ニ在リテハ第五艦隊ノ大部及軽快部隊、航空部隊ノ一部ヲ対露戦ニ転用シ速ニ在東洋敵艦隊ヲ撃滅シテ極東露領沿海ヲ制圧スルト共ニ陸軍ト協同シテ沿海州及鳥蘇里州方面ニ於ケル敵航空兵力ヲ撃滅ス
又陸軍ト協同シテ浦塩斯徳其ノ他極東露領ノ要地ヲ攻略ス
(二)
米国、英国及蘭国ニ対スル作戦初期ニ於テ露国トノ間ニ開戦トナリタル場合ハ主トシテ第五艦隊及内戦部隊兵力ヲ以テ先ヅ守勢ヲ執リ本邦沿海ノ海上交通線ノ保護並ニ要地防空ニ努ム
爾後南方作戦ノ情況之ヲ許スニ至ラバ軽快部隊及航空部隊ノ一部ヲ対露作戦ニ転用シ前項作戦ヲ強化ス
南方攻略作戦一段落後ニ於ケル作戦方針ハ前号ニ準ズ

第三章 作戦要領
三十一、
米国、英国及蘭国ニ対スル第一段作戦完了後露国トノ間ニ開戦トナリタル場合ノ作戦要領左ノ如シ
(一)
第五艦隊及航空艦隊ノ一部ヲ基幹トスル部隊ハ対露作戦初期速ニ沿海州方面及南部鳥蘇里州方面ノ敵艦隊及航空兵力ノ撃滅ニ任ズルト共ニ陸軍ト協同シテ浦塩斯徳ヲ攻略ス
(二)
連合艦隊ノ一部ハ対露作戦初期速ニ北樺太方面ニ在ル敵艦船航空機ヲ撃滅シ且該方面ニ上陸スル陸軍ノ護衛ニ任ジ之ト協同シテ同方面ノ要地ヲ占領ス
又勘察加方面ニ在ル敵艦船航空機ヲ撃滅シ且陸軍ト協同シテ同方面ノ要地ヲ占領ス
(三)
連合艦隊ノ一部及支那方面艦隊ハ所要ニ応ジ南方地域及支那ヨリ転用スル陸軍部隊ノ海上輸送ヲ護衛ス
(四)
前各号以外ノ部隊ノ作戦ハ第二編第三章ニ準ズ
三十二、
米国、英国及蘭国ニ対スル開戦初期露国トノ間ニ開戦トナリタル場合ノ作戦要領左ノ如し
(一)
各鎮守府及要港部部隊ハ各担任区域ノ防空並ニ交通線保護ニ任ズ
(二)
第五艦隊ヲ基幹トスル部隊ハ主トシテ日本海方面ニ在リテ在東洋敵艦隊ノ撃滅並ニ同方面ノ通商保護ニ任ズ
(三)
支那方面艦隊ノ作戦要領ハ第二編第二章ニ準ズルノ外中北支方面ヨリ転用スル陸軍部隊ノ海上輸送ヲ護衛スルト共ニ機宜戦線ヲ整理ス
(四)
南方攻略作戦ノ情況之ヲ許スニ至ラバ軽快部隊及航空部隊ノ一部ヲ対露作戦ニ転用シ第一項及第二項ノ作戦ヲ強化ス
(五)
南方攻略作戦一段落後ニ於ケル作戦要領ハ前号ニ準ズ
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