決断の雑誌
放送当時「決断」という月刊誌が日本テレビ放送網から刊行されていた。
この雑誌は「決断」本編をより楽しむための予備知識の獲得と、本編鑑賞後により理解を深めるための副読本的な役割を持っていた。
掲載記事は放送とシンクロした内容で、全6冊が半年間に渡って刊行された。
5月号(創刊号・Vol.1)
5月号は「決断」第1話~第4話に関連した記事を主に掲載。
表紙の長門型戦艦の絵は、講談社から出版された「少年倶楽部名作集」より転載したもの。
目次には、作戦要務令(陣中勤務と戦闘に関する準拠を示した陸軍の教典)を抜粋したものを掲載。
以下は5月号の主な記事。
アニメンタリー劇場
実際に放送で使用した絵を基に構成した記事。フィルムコミックの簡易版といったところだろうか。
第1話「真珠湾奇襲」をまとめた「トラ・トラ・トラ!? われ奇襲に成功せり」、第2話「ミッドウェイ海戦(前編)」と第3話「ミッドウェイ海戦(後編)」を一つにまとめた「ミッドウェイ海戦 勝敗をわけた運命の5分間」を掲載。
第4話「マレー突進作戦」をまとめた「電撃のマレー作戦 一路シンガポールをめざして」も掲載されたが、絵は放送で使用したものではなく、新たに書き下ろされたものが使用された。
座談会 マレー半島作戦電撃の70日
マレー作戦に参加した元陸軍将校が、同作戦について語った座談会。
山中得夫氏(第5師団参謀・少佐)、三柴恒夫氏(歩兵第11連隊大隊長・少佐)、市川正氏(歩兵第11連隊大隊長・中佐)、瀬川雄章氏(歩兵第21連隊中隊長・少佐)、内海庄三氏(捜索第5連隊中隊長・少佐)が出席した。
この座談会で、「決断」本編にもあったジョホールバルへの先陣争いで、第5師団の第21旅団が近衛師団の将校斥候を待ち構えていたことなども語られていた。
6・7月号(Vol.2)
6・7月号は「決断」第5話~第13話に関連した記事を主に掲載しているが、なぜか、この号だけ合併号である。
表紙の飛行艇は九〇式2号飛行艇、奥の軍艦は妙高型重巡が描かれている。
この号から表紙の「決断」の文字が番組本編で使われている書体になる。
以下は6・7月号の主な記事。
アニメンタリー劇場
第5話「シンガポール攻略」をまとめた「シンガポール攻防戦ここに決す!」、
第6話「香港攻略」をまとめた「ホンコンに白旗あがる」、
第7話「マレー沖海戦」をまとめた「不沈戦艦マレー沖に消ゆ!」、
第8話「珊瑚海海戦」をまとめた「珊瑚海に日米空母対決」、
第9話「ジャワ攻略」をまとめた「日本軍ジャワに進出」を掲載。
絵はすべて書き下ろされたものが使用された。
戦記特集
「決断」本編と関連のある記事を掲載。
記事の最初のページには6月の放送予定日が以下の通り掲載されている。
6月5日 海軍落下傘部隊
6月12日 第1次ソロモン海戦
6月19日 バターン・コレヒドール戦
6月26日 潜水艦伊号168奮戦記
しかし、実際に放送されたのは、
6月5日 海軍落下傘部隊
6月12日 バターン・コレヒドール
6月19日 潜水艦 伊-168
6月26日 第一次ソロモン海戦
の順であり、予定していた放送順と実際の放送順が異なっていた。
勇猛にして果敢、229連隊苦闘の戦記
香港、パレンバン、ニューギニア、ガダルカナルなどの各地を転戦した歩兵第229連隊を語った座談会。
細川直知氏(第38師団参謀・少佐)、黒崎貞明氏(第38師団参謀・少佐)、平谷正喜氏(歩兵第229連隊連隊旗手・少尉)の3名が出席した。
8月号(Vol.3)
8月号は「決断」第14話~第18話・第21話・第22話に関連した記事を主に掲載。
表紙の四輪装甲車はヴィッカース・クロスレイ装甲車。
この号からアニメンタリー劇場が掲載されなくなった。
以下は8月号の主な記事。
土浦に残る鉄の老兵
陸上自衛隊土浦武器学校で展示されている三式中戦車と八九式中戦車を撮影した折込のカラー写真を掲載。
写真記録 キスカ島守備隊
キスカ島周辺で豊富に取れる魚を釣ったり、整列して体操をしているところなど、守備隊の日常生活を撮影した写真を掲載。
懐しの軍歌集
戦後に発売された軍歌レコードを特集した記事。
約20枚のレコードをジャケット写真入りで紹介している。
アニメンタリー「決断」特集
「決断」本編のストーリーを紹介する記事ではなく、「決断」本編と関連のある事柄を掲載した記事。
記事の最初のページには7月の放送予定と、アニメンタリー「決断」特集で扱う記事の題名が以下の通り掲載されている。
7月第1週 南海の空"隼"は行く
7月第2週 奇跡のキスカ島撤退
7月第3週 ラバウル航空隊歴戦譜
7月第4週 長官山本五十六戦死の謎
7月第5週 カミカゼはこうして生まれた!
第1週は第14話「加藤隼戦闘隊」、第2週は第16話「キスカ島撤退」、第3週は第15話「ラバウル航空隊」、第4週は第18話「山本五十六の死」、第5週は第17話「特攻隊誕生」のことだと思われ、予定していた順と実際に放送された順が異なっていた。
栗田中将会見記
レイテ沖海戦について語った栗田健男氏(第2艦隊司令長官・中将)の会見記事。聞き手は竹槍事件で知られた新名丈夫氏。
記者会見での質問を抜粋すると、
- Q.
- 第2艦隊では出撃前、輸送船と刺し違えるなんて真っ平だと議論沸騰したそうですが、反転の動機は結局艦隊決戦の思想から出たものではなかったでしょうか?
- A.
- いや、輸送船も叩かねばならぬと思っていました。
- Q.
- フィリピンの狭い海峡を突破して、大艦隊が遠征した作戦が、そもそも無理ではなかったのでしょうか?
- A.
- それでも行かなければならなかった。中央突破のほか方法はなかった。敵のレイテ上陸をむかえて、1日を急いで、それを叩かなければならなかったのです。
- Q.
- 愛宕、高雄、摩耶が、どうして、あんなにやすやすと敵潜水艦にやられたのでしょうか?
- A.
- パラワン水道を行かずに、西方のスプラトリー諸島をまわれば、その付近には岩礁が多いので、敵潜水艦が出没せず、安全であることがわかっていました。だが、そうすれば、1日遅れるのです。その時間がなかったのです。
そして、「謎の反転」について栗田氏は、「すべてわからなかった」と答えていた。
レイテ海戦を語る
当時の関係者が参加した座談会。
黛治夫氏(重巡「利根」艦長)、末松虎夫氏(第1戦隊通信参謀)、吉田俊雄氏(軍令部参謀)、新名丈夫氏(海軍報道班員)が参加してレイテ沖海戦を語った。
9月号(Vol.4)
9月号は「決断」第19話~第22話に関連した記事を主に掲載。
表紙の飛行機は第一次世界大戦時の独軍機フォッカーDr.Iと英軍機ロイヤル・エアクラフト・ファクトリー S.E.5。
以下は9月号の主な記事。
まぼろしの大本営
松代大本営を取材した記事。5ページに渡り写真が掲載されている。
テレビストーリー
「テレビストーリー」とあるが、これは本編のストーリーを紹介する記事ではなく、本編に関連性のある事柄を掲載した記事。
記事の最初のページには8月の放送予定と、テレビストーリーで扱う記事の題名が以下の通り掲載されている。
8月第1週 世界に誇る秘密兵器「酸素魚雷」
8月第2週 悲劇の超戦艦「武蔵」の無骨な最期
8月第3週 敗戦の序曲となったマリアナ沖海戦
8月第4週 大艦巨砲主義は正しかった
第1週は第19話「ルンガ沖夜戦」、第2週は第21話「レイテ沖海戦(前編)」、第3週は第20話「マリアナ沖海戦」、第4週は第22話「レイテ沖海戦(後編)」のことだと思われ、予定していた順と実際に放送された順が異なっていた。
10月号(Vol.5)
10月号は「決断」第23話と第24話に関連した記事を多少掲載。
表紙は艦上観測気球を上げる戦艦陸奥。
以下は10月号の主な記事。
TVストーリー
本編に関連性のある事柄を掲載した記事。
第23話「硫黄島作戦」に関連した記事「砂浜を血で染めた硫黄島の激突」、
第24話「連合艦隊の最後」に関連した記事「最後の兵力をつぎ込んだ沖縄決戦」、
第17話「特攻隊誕生」に関連した記事「華と散った神風特攻隊の栄光と悲劇」
を掲載。
11月号(最終号・Vol.6)
最終号となる11月号は、本編の放送終了後に刊行されたためか、大半は本編とは無関係な記事で占められている。
表紙の飛行機は九三式重爆。
以下は11月号の主な記事。
長官機密林に眠る
ブーゲンビル島の山本長官機墜落現場を取材した記事。
欲しがりません!勝つまでは
1930年から1945年までの銃後の生活を記録した写真を掲載。
雑誌「決断」に掲載された広告
決断5月号に掲載された番組広告。
双眼鏡を持った海軍士官は山本五十六大将。
広告には当時のスポンサー「サッポロビール」と「矢崎総業」の名が掲載されている。
また、各放送局の放送時間も合わせて掲載されていた。
※5月号・番組広告1・レコード広告を除いた雑誌「決断」の各画像は、本土決戦軍司令部さんからの提供です。
決断のレコード
OP・EDテーマ収録のレコード
A面にOP「決断」、B面にED「男ぶし」を収録したレコード(SCS-127)が1971年5月に日本コロムビアから発売された。
ドラマ「決断」のレコード
このレコードは第1弾として「真珠湾奇襲」(C-46)が1971年9月に、以降「ミッドウェイ海戦(すてられた5分間)」(C-47)、「ミッドウェイ海戦(空母飛竜の最期)」(C-48)、「マレー突進作戦」(C-49)、「シンガポール攻略」(C-50)、「バターン・コレヒドール攻略」(C-51)、「潜水艦伊168号」(C-52)、「キスカ島撤退」(C-53)、「加藤隼戦闘隊」(C-54)、「ラバウル航空隊」(C-55)が発売された。
内容は放送された音源を短縮して再構成したもの。挿入された曲は実際に放送されたものとは違うものもあるらしい。「ミッドウェイ海戦(空母飛竜の最期)」には「勇敢なる水兵」、「潜水艦伊168号」には「海の進軍」、「キスカ島撤退」には「戦友」などが収録されていたという。
※ドラマ「決断」の各画像は、Aさん(仮名)からの提供です。
アクションヒロイン チアフルーツ
「アクションヒロイン チアフルーツ」とは、2017年7月~10月に放送されたアニメ。ご当地ヒロインを題材とした作品で、本編や予告には特撮やアニメのネタをパロディにしたものが多く盛り込まれていた。
この作品の第8話放送後の次回予告(第9話の予告)に、決断の冒頭のナレーションがパロディとして使用された。
メインキャラクターの赤来杏(あかぎあん 声:伊藤美来)が『人生でもっとも貴重な瞬間、それは決断の時である。特撮ヒーローやヒロインは、われわれに平和の尊さを教えたが、また、生きるための教訓を数多くのこしている』と、「太平洋戦争」を「特撮ヒーローやヒロイン」に変えた以外はオリジナルと同じ台詞を言った。オリジナルに似せたSEが入り、ナレーション終了直後の爆発音も再現していた。
当ページ「アニメンタリー決断とは」は、自身の調査と皆様からの情報提供に基づいて構成致しました。
貴重な情報を提供して頂いた方に改めてお礼を申し上げます。